ヤンネ舘野 Janne Tateno(ヴァイオリン)
WAONCD-500 /
66min Stereo / CD(HQCD) 2021年12月4日発売 オープンプライス JAN/EAN
4560205956503
WAONCD-500 / CD〜Hi-Res 2022年4月15日配信開始 オープンプライス JAN/EAN
4560205956503
Apple Music / iTunes 2021年12月4日配信開始 / Naxos
Music Library Japan 2022年4月29日配信開始
WAONCD-500G(海外版) / CD〜Hi-Res 2022年4月15日配信開始 オープンプライス JAN/EAN 4560205958033
解説:小川至/平野一郎/ヤンネ舘野(日本語、英語)
レコード芸術誌〈準特選盤〉 Stereo誌「この音を聴け!」高崎素行氏〈推薦〉
ワオンレコード http://waonrecords.jp/waoncd500.html
フィンランドと日本を2つの故郷とするヤンネ舘野が、同郷作曲家であるノルドグレン、エングルンドの、更に隣国旧ソビエト連邦の作曲家ハチャトゥリャンのヴァイオリン独奏曲をモダンヴァイオリンで熱演。またバロックヴァイオリンに持ち替えてバッハの大作、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番に挑む。その繊細でもあり剛直でもある独絃の調べは、時代や楽器の違いを超えて心の琴線に触れてくる。電流伝送マイクペアと5.6MHz DSDによる高音質録音。
【収録曲目】
エイナル・エングルンド 1.独奏ヴァイオリンのための《遮られたアリオーソ》
アラム・イリイチ・ハチャトゥリャン
2.独奏ヴァイオリンのための《ソナタ=モノローグ》
ペール・ヘンリク・ノルドグレン
3.ヴァイオリン独奏のためのソナタ 作品104
ヨハン・セバスティアン・バッハ
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番
ニ短調 BWV1004(バロックヴァイオリン演奏)
4. アルマンド
5. クーラント
6. サラバンド
7. ジーグ
8. シャコンヌ
CDブックレットの文章と重複する部分もありますがCDについて少し書かせていただきます。
録音をした2020年秋に、友人の作曲家平野一郎氏とCD会社ワオンレコードの小伏和宏氏が、別の録音プロジェクトを企画されていました。フィンランドから、私の友人でギタリストのペトリさんを呼び、私も参加するはずであった録音セッションでしたが、コロナ禍でキャンセルになりました。ホール、CD会社小伏氏(録音エンジニアでもあります)のスケジュールも押さえているということで、急遽私が録音させてもらうことにしました。当初は売るためではなく、勉強のために録音してみようという気持ちでした。
パンデミックが始まったころ、色々な音楽家がYouTube配信やオンラインコンサート配信など、新しい取り組みをしていましたが、自分には全く向いていないと感じ、インターネットとは離れた事をやりたいと考え、逆行するようですが、スローな音楽の発信方法を試しました。
前々から特に強く興味を持ち、その時に一番身近で、自分にとって特別な存在の曲を選びましたが、小伏氏や録音に立ち会ってくれた平野氏は、人があまり選ばないような”私のマニアックな選曲”を理解してくれました。お蔭で録音が実現し、結果的にCDを発売しようという話に発展しました。
その年の前半は、他のアーティストの皆さんと同様に、私も仕事が全く無くなりました。その期間は、じっくり深い思慮の元、落ち着いて勉強ができ、自分のためだけにヴァイオリンを弾く貴重な時間でした。無伴奏の曲を弾き続けました。特にバッハの無伴奏曲は毎日弾いていたこともあり、今回、その中でも他の現代曲に一番合うと思うパルティータ2番を録音しました。昨年秋にタイミング良く、念願であったバロックヴァイオリンと弓が手に入ったことはバッハを録音する一つのキッカケにもなりました。意図して選曲したわけではなく、全くの偶然なのですが、孤独にヴァイオリンを弾き、自分の内面に向き合う独奏の世界は、昨年のコロナ禍の状況に似ている、響くと感じます。人と距離を持ち、言いたいことや不安なことがあるのに言えない、表に出せない、出さない。まさに「モノローグ·独白」の世界です。収録している曲すべてがモノローグの世界です。
自然にタイトル「Monologo via Corda」が決まり、日本語の独絃哀歌は平野氏が考えてくれました。
◎収録した曲について
⋄ノルドグレンは私が生まれた国フィンランドの現代作曲家の中で最も尊敬する作曲家の一人で、父の親友でもあり、私も個人的に繋がりのある人でした。彼が作曲したソナタは、フィンランド東部、ロシアとの国境地帯(フィンランドとロシア両側の地域。戦前はフィンランドの土地であった)、カレリア地方で昔行われていた風習を題材に作曲されています。お葬式や結婚式に現れる、現世と別の世界を繋げる役目をしていた「哭き女」の哀歌を引用しています。
ノルドグレンの弦楽四重奏曲の解説ですが父がこのように書いています。 『ペール・ヘンリック・ノルドグレンは左利きでヴァイオリンも弓は左手で持っていた。それでも彼は自分はヴァイオリンの作曲家だと言っていたのは、それが最も彼の心に近かったからだろう。フィンランド西部の民俗音楽の聖地カウステイネンで暮らしていたが、民俗音楽でもヴァイオリンが主要な役割を果たしている。ヴァイオリンはそこでも人の心を最もよく伝えるものだった。ノルドグレンはその生涯に弦楽四重奏曲を多く遺している。彼が最も尊敬していたベートーヴェンやショスタコーヴィッチのように。、、、略』
心を伝えるヴァイオリン一本での演奏から、フィンランドの民俗的な世界を感じ取ってくださることを願います。
⋄エングルンドは2度も戦地に送られ前線で戦った経験を持ち、フィンランドの過酷な時代を生き抜き、その激動の人生を表すような作品からは、大変な衝撃を受けます。ピアノ曲、ピアノコンチェルト、ピアノクインテットなど素晴らしい曲があります。ピアニスト、作曲家、編曲家、指導者としても活躍した人です。
⋄ハチャトゥリアンの曲は前からとても興味があり、やってみたいと思ったのですが、たまたま作曲されたのが1975年、この曲は私と同じ歳でした。昨年(2020年)私は45歳になりました。実は各地でリサイタルツアーをしたいと数年前から考えていましたが、コロナ禍で実現できませんでした。その代わりのように録音、CD制作に挑戦できたことはとても幸運でした。
ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲は父の得意な曲の一つでした。1976年に日本フィルハーモニー交響楽団(指揮外山雄三)とハチャトゥリアンのピアノ協奏曲の日本初演をしています。当初ハチャトゥリアン本人が指揮をする予定でしたが、来日直前に体調を壊したため残念ながら共演は叶わず、2年後ハチャトゥリアンは亡くなってしまい、会うことも出来ませんでした。このピアノ協奏曲をハチャトゥリアンのルーツであるアルメニアで、日本人で初めて演奏をしたのも父でした。私にとってもハチャトゥリアンとの縁を感じられる歴史です。この独奏ヴァイオリンのための《ソナタ=モノローグ》はこれからもずっと長く弾いていきたい素晴らしい曲です。
⋄バッハは言うまでもなく、多くの音楽家にとって永遠の課題といえる作品。今回バロックヴァイオリンを使用しましたが、ガット弦の扱いに関して判断を誤ったかもしれないという後悔があります。詳しいことはブックレットに記載しています。完璧な演奏とは言い難く、シャコンヌでは不本意なところもあり、シャコンヌを省くことも考えましたが、そうするとこのCDを諦めざるを得ないことになるので、今の”等身大の自分”をCDに残し、ありのままの演奏を聴いていただくことにさせて頂きました。反省をもとに精進し続けて行きます。
◎ブックレットに使用している作品について
前 壽則さんと私
二十数年前、あるご縁で福井県鯖江市の鈴木早苗さん宅にホームステイをさせてもらったことがあり、その繋がりで鈴木さんはここ数年、鯖江市での私のコンサートを企画してくださっています。図書館でのライブラリーコンサートもさせていただき、その時に図書館館長をされていたのが前壽則さんでした。作品も紹介して頂き独特な雰囲気に感動したことを覚えています。それ以来、前さんは私が福井県で演奏する度に聴いてくださり、色々な面で大きなサポートを頂いております。室内楽コンサートをやった時も会場に作品の展示をしてくださいました。2021年の4月福井県越前町で父子コンサートをした時も作品展示をお世話になり父共々嬉しく思いました。自然の草花を題材にされているところにとても惹かれました。人が見落としてしまうようなところに目を向け、敏感に、繊細にその存在を感じ取る。じっくりと何時間もかけて行う地道な作業のことも興味深く思いました。私が録音した曲もバッハ以外は人があまり弾かないような曲で、そういうところが通じ合うなと思い、今回CDジャケットに作品を使わせて頂きたいとお願いした
ところ快諾頂き本当に感謝しています。
※インターネットで前 壽則 Mae Hisanori と検索してくださると 前さんに関して詳しいことを知って頂けます。作品もご覧いただけます。
良いタイミングが重なったことと、色々なご縁によって誕生したCDです 。皆様にゆっくり、じっくり聴いていただけることを願っております。お会いするチャンスに感想を聞かせていただけると幸いです。
ヤンネ舘野